栄養不足も原因の1つ
疲労骨折とは、繰り返しの微小な外力によって骨が微細な亀裂を起こし、最終的に骨折してしまう病気です。ランナーは、長時間走行することで足に大きな負荷がかかります。そのため、疲労骨折を起こしやすい傾向にあります。また、ランニングシューズが合っていない、フォームが悪い、筋肉が弱い場合にも、疲労骨折のリスクが高まりますが、栄養不足も原因の1つとなっています。疲労骨折予防のために積極的に摂取したい栄養素を紹介します。
● カルシウム
カルシウムの約99%は骨や歯に存在しており、骨の主な成分となっているので、欠かさず摂取する必要があります。カルシウムは吸収されにくい栄養素で、摂取した20〜30%しか吸収されません。食品によっても吸収率は異なり、カルシウム摂取量のうち牛乳などの乳製品は約40%。小魚は約30%。緑黄色野菜は約20%といわれています。また、過剰なリンはカルシウムの吸収率を低下させます。
● マグネシウム
マグネシウムは、神経の興奮を抑え、体温や血圧を調整しています。生命の維持に関わる大切な栄養素で、体内のマグネシウムのうち50~60%は骨に含まれています。マグネシウムは骨を形成する骨芽細胞に働きかけ、骨の中に入るカルシウム量を調節しています。そのため、不足するとカルシウムが骨を形成しにくくなります。カルシウムとマグネシウムは2:1で摂取するのが望ましいとされています。
● カリウム
近年、カリウムの摂取量を増やすことによって、尿中カルシウム排泄を抑制し、骨吸収を抑制することが、骨密度の増加につながることがわかってきました。カリウムは、1日3,500mgを摂取することが目安となっています。令和元年の国民健康・栄養調査によると、20〜69歳の男女の1日のカリウム平均摂取量は2162mgとなっています。これは、摂取目安を大幅に下回っています。
● ケイ素
● ビタミンD
ビタミンDは、腸管からのカルシウムとリンの吸収を促し、骨密度を増加させることによって骨強度を増し、骨折のリスクを減らすと考えられています。また、骨の材料となるカルシウムは、非常に吸収率がよくありません。しかし、ビタミンDを一緒に摂取すると、吸収率が高まります。ビタミンDが不足していると、カルシウムの吸収率はさらに悪くなります。
● ビタミンK
ビタミンKは、骨に存在するオステオカルシン(カルシウム結合タンパク質)を活性化し、カルシウムが骨にくっつくのを助けたりカルシウムが骨から溶け出してしまうのを抑えたりしています。また、コラーゲン生成を促進し骨質を改善します。そのため、骨粗しょう症の治療薬にも使用されています。ビタミンKが不足すると骨が弱くなり骨折が多くなります。
● 葉酸
骨量が十分あっても骨質が悪いと骨折を起こしてしまいます。本来しなやかで柔軟性がある善玉架橋が、悪玉架橋を多く含む骨になると、骨量があり骨が固くても、チョークのような柔軟性のない、もろい骨となってしまいます。悪玉架橋の原料となる悪玉アミノ酸『ホモシステイン』は、ビタミンB12と葉酸を摂取することで、善玉アミノ酸メチオニンに変換することができます。
● ビタミンB6
ビタミンB6には、悪玉アミノ酸ホモシステインをシステインに変換し無毒化する働きがあります。骨折しやすい人の体内には、ビタミンB6などが少ないという傾向もみられます。ビタミンB6、ビタミン12、葉酸を摂取することで骨折率が29.9%から13.1%まで抑制したと言う報告もあります。